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第5回「株式会社オーユーシステム 南石社長×株式会社ベクトル 多田取締役×株式会社SWITCH WORKS 竹本代表取締役」

2016.03.28

てい談企画

第5回 次世代経営者と語る「今後の事業展開と人材育成」について
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人材育成てい談の第5弾。今回、人材育成や福利厚生の充実で人事改革に取り組んでいる㈱オーユーシステム(岡山市)社長の南石拓哉氏と㈱ベクトル(同市)取締役の多田英起氏に、人材育成トレーナーの㈱SWITCH WORKS(同)社長、竹本幸史氏が、経営者と社員とのコミュニケーションの取り方や新入社員の育成方法などについて聞きました。

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㈱オーユーシステム社長
南石拓哉氏

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㈱ベクトル取締役
多田英起氏

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㈱SWITCH WORKS社長
竹本幸史

南石 先輩社員の行動が新人を育てる。部下の失敗はすべて社長の責任

多田 役職が人を成長させる。権限委譲でやる気を引き出す

竹本 まずは両社の事業内容について聞きたいと思います。

多田 基本的な事業は衣料品の買い取り、販売です。店舗はほぼ買い取りがメーンで販売はネットですね。販売は安定しているので、買い取りができれば、成り立っていく事業モデルです。

南石 当社は各取引先の販売管理システムをメーンに展開しています。

竹本 システムメーカーとしてどう他社との差別化を図っているのでしょうか。

南石 当社の強みは、運輸業向けの検査システムや食品向けの品質管理システムなどの自社パッケージ商品があることです。また、大手企業からシステムソースを提供してもらい、当社でカスタムして販売しています。

多田 業界によって求められるシステムのレベルは違うものなのでしょうか。

南石 それは違いますね。食品管理や品質管理などはかなりのレベルを求められます。取引先の担当者しか分からないノウハウを共有できるSEしかシステム構築できませんからね。ただそうなると価格も高くなります。当社はシステムの高品質を維持しながら、価格を抑えることで競合と勝負しています。当社のSEは、業種ごとに事業内容や構造を熟知している人材が多く、特に運輸や食品管理に関しては大手企業よりもレベルが高いと自負しています。

竹本 SEのレベルが高いのは何か独自の教育方法があるのでしょうか。話を聞いていると特にコミュニケーション能力の高さを感じるのですが。

南石 研修など特別なことはしていません。人材育成の研修は、社員のモチベーションも向上しますし、大切なことだと思いますが、もっと大切なのは社員一人ひとりの働く姿勢など会社の社風が一番の人材育成だと思っています。一生懸命に働く先輩や上司を見て、新入社員も自ら行動しようと思うのです。

竹本 社員が優秀な会社は、上司や先輩に行動的な人が多いですね。そういう環境をつくるには経営者の理念がしっかりしていなければなりません。中小企業の多くは日々の仕事をこなすだけで明確な目標を設けていないのが現状です。南石さんの会社の状況は、理想的な形の一つだと思います。研修やセミナーなどの社員教育は、社員が自ら行動する環境ができれば、常に取り組む必要はありませんからね。

南石 組織が力を発揮するためには、社員全員が一丸となって取り組もうとする雰囲気づくりが大切だと思います。当社もそういった働きかけを経営者として常に心掛けています。

竹本 リーダーの発信力は重要だと思います。何をどうしたいのかを語らないと社員には伝わりません。

南石 当社は40~50代の社員が一番責任感が強く、何事も率先して取り組むので、若手もそれを見習って行動しています。

竹本 ベクトルもここ数年で社員が急激に増え、新しい事業も積極的に展開していますが、社員教育で何か取り組んでいることはありますか。

多田 当社は日々変化を繰り返すことで、企業体質を強化してきました。昨日の自分を超えていかないと仕事もプライベートも楽しくないというのが社風です。この考え方は、一つの失敗がきっかけになっています。以前、新入社員、店長など役職ごとに集めて週に1回、役員のメッセージを発信する会を設けていたのですが、集まる時間がないなど社員からの要望で中止したのです。その結果、トップの考えが社員に伝わらず、社内がバラバラになってしまいました。結局、また同じような会を設けて、トップと社員がコミュニケーションを図れるようにしました。人材育成の制度設計は大切ですが、やはり、直接コミュニケーションを図ることが重要だと思います。あとは、どれだけ権限移譲できるかですね。役職が人を育てるということもありますから。

南石 立場が人を成長させるということはありますね。

竹本 部下に権限移譲した時に、上司がサポートすることが重要です。業務においてはすべてを任せ、失敗した時には上司が責任を取るということを伝えれば、自ら率先して行動するようになります。部下の伴走者になることが重要です。

南石 権限移譲は重要ですね。私は社長ですが、システム関連の能力は社員の方が上です。私が直接業務に口出しすれば、仕事が滞ってしまうでしょう。経営者は部下を信じて仕事を任せる勇気が必要です。もちろん、私自身もレベルアップし続けなければいけませんけどね。

多田 私も同じです。私の直属の部下は、私より仕事ができます。任せることで部下のやりたいことを引き出し、それに対してアドバイスすることが上司の役割だと思います。そして、成果が出れば、部下の功績にする。それが成長への近道だと思います。

竹本 2人に聞きますが、自分よりも能力の高い人をまとめるために大切なことは何だと思いますか。

南石 私は最終責任を取る覚悟があるかどうかだと思います。部下の失敗は、部下に任せた上司の責任ですからね。

多田 私は情熱だと思います。あと当たり前のことですが、成功は部下の手柄、失敗は上司の責任。これは必ず明確にしておく必要があります。そうでなければ、社員は働きません。

竹本 確かに部下の成果を自分の手柄にする上司は多いですね。

南石 若い社員によく話すのですが、もっと出世欲をもたないと駄目だと伝えています。上を目指して頑張らないと仕事は面白くないですからね。ただ、出世したことで、すべての成功が自分のものだと勘違いすると失敗します。部下の成功を認め、良いところを伸ばす人になれば、結果として自分の評価を上げ、成長につながると思います。

多田 その通りですね。

南石 企業同士でも同じだと思います。自分の会社のことだけを考えて、取引先の利益をないがしろにすれば、必ず自分に跳ね返ってきます。

竹本 多田さんに聞きたいのですが、今、人材育成で幹部教育や新人教育など注力している世代はありますか。

多田 今は原点回帰して、新人教育に力を入れています。幹部を育成し、その幹部から一般社員に伝えてもらおうと思ったのですがなかなか伝わらなかったので。

竹本 具体的にはどういった新人研修を実施しているのでしょうか。

多田 月1回、新入社員と社長が集まり、経済問題やビジネスマナーなどのテーマで勉強会を実施しています。あと、3カ月に一度、部署や店舗をバスに乗って巡る「バスウォッチング」というツアーも実施しています。1日に約10店舗を視察するのですが、基本的に各店舗の良い所を見つけてもらい、それを自分の仕事や店舗運営に反映させるようにしています。良いところに気付く習慣をつけさせるのが目的の一つです。

竹本 現場を見て、働いている人の動きや空気感などを感じることで、自分の改善点に気付き、生産性を高められる。良い取り組みだと思います。南石さんは、社員が率先して新事業を立ち上げる仕組みを設けていますね。

南石 当社は社員のやりたいことや業務改善などを吸い上げる部署があります。すべての書類を担当の部長ではなく、役員がチェックし、事業化できるかを判断しています。

多田 すべて役員がチェックするというのはすごいですね。大体、各担当部署の部長のところでふるいにかけられますから。

竹本 最初の提出段階できちんとした事業計画まで出すのでしょうか。

南石 まず初めの段階ではそこまで求めません。アバウトでもいいので、やりたいことを提出してもらい、そこからきちんとした事業計画を提出してもらいます。

竹本 一つの企画に対してどれぐらいのメンバーが参加しているのでしょうか。

南石 約10人程度ですね。提案者がほかの社員に声を掛けてプロジェクトメンバーを構成しています。

竹本 いいですね。一人で考えるのではなくて、社員が協力して新事業を立ち上げる仕組みが社内に根付いているのですね。

南石 基本的に、社員から上がってきた事業案や改善案はすべてやりたいと思っています。頭ごなしに駄目出しすることはないですね。もちろん、ちゃんとした計画は必要ですけどね。責任は私が取ることが大前提です。

多田 失敗してもいいから挑戦するというマインドを植え付けることができれば、会社にとっても社員にとっても財産になりますからね。いい仕組みだと思います。

竹本 社員から自発的にアイデアが出るというのは、非常にいい社風が構築できている証拠です。

南石 社員の声がトップに届くという体制はこれからも続けていきますよ。

多田 こういう社風が根付いていれば、上司と社員のコミュニケーションの質が変わると思います。例えば、一つの事業に対しての質問もより具体的になってくるので、上司もアドバイスしやすくなります。

竹本 オーユーシステムでは福利厚生についてもいろいろな取り組みがあるようですね。

南石 賞与に関しては、利益の多くを社員に還元しています。年2回賞与があるのですが、月次の利益によって賞与への配分が社員に分かるようにしています。

多田 すごいですね。南石社長の事業に対する本気度がよく分かりますね。社員がやる気になるはずですよ。

竹本 この制度を始めたきっかけはなんだったのでしょう。

南石 会社は社員のものだと思っています。決して会社の資産は社長のものではありません。社員が働いてくれているから事業が成り立っているのですから。だから、利益を社員に還元しているだけです。もちろん必要最低限の内部留保はしていますよ。

竹本 では、今後の事業展開について聞かせてください。

南石 システム業界ではクラウド化が進んでいます。その時代の流れに取り残されないように、クラウドやAIなどの技術を取り入れていきたいと思います。

多田 基本的にはリサイクル事業でFC展開を拡大することです。あとは、ウエブでの買い取り強化ですね。今は岡山だけですが、物流コスト改善のために全国6カ所で展開したいと思っています。期間は3~5年で実現する予定です。人材育成に関しては、常にチャレンジがテーマです。そのために別会社を設けて、社員から上がってくる新事業の実現に向けて取り組んでいます。

竹本 最後に経営に携わるものとして今後も継続していくことがあれば教えてください。

南石 ビジネスにおいて、私もできないことがたくさんあります。ただ、理想を持たない人間がそれを実現することはできません。僕は何歳になっても理想を語る経営者でいたいと思っています。 

多田 どんな優れたシステムや仕組みをつくっても、そこに血が通っていなければ意味がありません。それをできるのは人間の「やってやる」という情熱です。これからも情熱を持って、仕事に取り組み、社員と積極的にコミュニケーションを図っていきたいと思います。

株式会社瀬戸内海経済レポート「週刊VISION」 2016/3/28発行号 特集企画より抜粋した記事を編集しております。