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第2回「株式会社岡山トヨペット 末永副社長×トミヤコーポレーション 古市代表取締役社長×株式会社SWITCH WORKS 竹本代表取締役」

2015.01.19

てい談企画

第2回 次世代経営者と語る「今後の事業展開と人材育成」について

業務通じ実戦形式で育成 私生活の充実で接客技術向上

円安による原材料高で食品などさまざまな商品が値上がりしている。物価上昇が加速する中、県内企業が業績を回復させるには、商品やサービスに磨きをかけながら、さまざまな角度からの人材育成がカギとなる。今回、岡山県の老舗企業である岡山トヨペット㈱(岡山市)副社長の末長一範氏と㈱トミヤコーポレーション(同)社長の古市聖一郎氏、人材育成トレーナーの㈱SWITCH WORKS(同)社長、竹本幸史氏に、次世代経営者が考えるこれからの企業における人材育成について語ってもらった。

岡山市出身。アパレル会社に3年間勤務。その後大阪のトヨタ系ディーラー兼務を経て2006年取締役に就任し、14年から副社長を務める。またグループ会社の役員も兼任。35歳

㈱岡山トヨペット副社長
末長一範(すえなが かずのり)氏

岡山市出身。アパレル会社に3年間勤務。その後大阪のトヨタ系ディーラー兼務を経て2006年取締役に就任し、14年から副社長を務める。またグループ会社の役員も兼任。35歳

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トミヤコーポレーション 社長
古市聖一郎(ふるいち せいいちろう)氏

岡山市出身。呉服販売会社勤務を経て2003年に入社。10年に代表取締役社長に就任。岡山青年会議所、岡山商工会議所青年部所属。35歳

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㈱SWITCH WORKS社長
竹本幸史(たけもとゆきふみ)

鳥取市出身。元㈱リクルート岡山支社長。2013年に人材育成を主としたコンサルティング業務の㈱SWITCH WORKSを設立。38歳

竹本 まずは2人のことについて聞きたいと思います。2人とも地元老舗企業の後継者で同級生と共通点が多いですね。またプライベートでも交流があるということですが、お互いに経営や人材育成のことについて話し合ったことはあるのでしょうか。

末長 大学卒業後、社会人になってから共通の友人を通じて交流が深まりました。それ以降はプライベートでもよく会うようになりましたね。経営のことについては、社員との接し方で自分がどう立ち振る舞うべきかを話し合ったことがありますね。

古市 そうですね。私が入社した当時は、まだ25歳ぐらいでしたから、後継者としてどう社内で立ち振る舞うか悩んでいた時期でしたね。

竹本 2人とも後継者として会社に入る前に、別の会社に勤めたという経験はないのでしょうか。

古市 私は1年間、呉服販売会社に勤めていました。その後、当社の新店オープンに合わせて入社しました。

末長 私は3年間アパレル業界で販売員として働いていました。その後、2年間大阪にあるカーディーラーで経験を積んでから入社しました。

竹本 では、簡単に2社の事業内容を聞かせてください。

古市 当社は時計、宝石など貴金属の販売業を展開しています。「ハイクオリティ オブ ライフ」をモットーに、腕時計や宝飾品があることによって、お客様が心豊かになることを提案できる接客を心掛けています。

末長 トヨタ自動車の新車販売をはじめ、中古車販売、自動車のメンテナンス、用品・部品販売を展開しています。そのほかにグループ企業では、物流業、住宅、カーリース業なども展開し、総従業員は1300人になります。

竹本 古市さんは、昨年11月に高級ブランドの生活雑貨や趣味のアイテムを取り揃えた「Omotecho Style Store(表町スタイルストア)」をオープンしましたね。きっかけは何だったのでしょうか。

古市 高級時計や宝飾品が好きなお客様に、世界の一流品やライフスタイルブランドを提案することができる店をつくりたかったのです。これによりお客様の間口が広がり、身近でありながらも、心が豊かになるような商品を提案できるようになったと思います。

アフターサービス強化がカギ。グループ会社のメリット生かす

竹本 末長さんは、何か新しい取り組みをしているのでしょうか。

末長 自動車業界は、新型車が出ないと市場が活性化しないのが通例です。ただすべての新型車が売れるわけではないので、売り上げに大きな波ができるのが課題でした。そうならないよう新車販売以外での利益を上げるため、当社では車検などのアフターサービス強化や車のナビゲーションとのサービス機能が拡充されている携帯電話の販を実施しています。現在、国内の年間登録車数は約300万台。20年前に比べると約半分の市場となっています。それだけ車が売れなくなっているのです。ただ車を売るだけではカーディーラーは生き残れない。業界全体でアフターサービスに注力する動きになっていますね。

竹本 車のアフターサービスに対しては、専門店やガソリンスタンドなど競合の多いと思います。ディーラーが取り組む難しさはないのでしょうか。

末長 もちろんあります。消費者からはディーラーは車を売るのがメーンと思われていますからね。今後、そういった認識をどうやって変えていくかが課題になっていくと思います。

竹本 貴金属販売でのアフターサービス市場はどうなのでしょうか。

古市 基本的にアフターサービスでもうけようとは思っていません。ただそれをきっかけに、顧客との接点をつくり、販売につなげる提案力が大切だと思います。

末長 私も同じ考えです。親切で丁寧なアフターサービスがリピーターにつながり、そこから車の購入希望者の紹介などにつながっていきますからね。

竹本 そうなってくると消費者とのコミュニケーション力が求められるわけですが、そういった人材育成には力を入れているのでしょうか。

古市 仕事の話だけでなく、顧客と雑談を楽しめるコミュニケーション力と知識を身に着けるように指導しています。特に時計や宝飾品は、商品の説明をするだけでは購入してくれません。従業員自体が豊かな人生を歩んでいることが、消費者の購買欲を刺激すると思っています。そのためには趣味やプライベートでの活動が大切です。従業員には、いろんなことを積極的に取り組むようにと話しています。

末長 車も同じです。サスペンションやエンジンの話をしても購入には直結しません。特に女性はそういったことにほとんど興味を示しませんからね。家族で車の購入を検討している場合、購入を決定するのは、昔は男性でしたが、今はほとんどが女性です。現在、女性目線を意識した「奥様ミカタプロジェクト」を進めていて、店舗内の快適さや利便性などを考慮し、気軽に来店いただける店づくりを遂行しています。また、ブログの掲載や応対研修も行っています。

竹本 両社とも自社ブランドのものを扱っていないので、他社と商品によって差別化するのは難しい。やはり社員の能力を向上させて、差別化を図ることを自然に取り組まれているのですね。

顧客との雑談楽しんでほしい。心豊かになる商品を提案

古市 接客するという姿勢で顧客に向き合うとどうしても自分から話を進めてしまいます。顧客に趣味や普段の生活の話をしたくなるような質問力が必要だと思います。どちらかと言うとカウンセラーのような姿勢でいることがいいのではないでしょうか。

竹本 だれに決定権があるかをシミュレーションして販売するというのは大切ですね。ただ高いコミュニケーション能力も求められので、若い社員すべてに浸透させるのは難しいのではないでしょうか。

古市 若い社員には、分からないことは分からないと言うなど誠実に取り組むように伝えています。知ったかぶりするのではなく、素直に教えてくださいと言えば、いろんな話を聞き出せるチャンスにもなります。また調べてから後日手紙を送ってフォローするのもいいと思います。

竹本 末長さんはほかに取り組んでいることはありますか。

末長 社員の意欲を高めるため、表彰制度を設けています。売り上げなど部門を設けて、年1回表彰式を実施しています。車両販売部門の各グループで1位になったスタッフには、新車をプレゼントしています。また全社員で岡山を盛り上げ、元気にしていこうをいう思いから2年前に「この街をもっと。」というスローガンを掲げました。笑顔で接客するなど仕事を通じて社会貢献活動に力を入れ、岡山を元気にしようと考えたのです。

竹本 スローガンを掲げるきっかけは何だったのですか。

末長 単純に生まれ育った岡山が好きなので、もっとよくしたいと思ったのがきっかけでした。これを契機に何か新しい取り組みを始めようと考えていました。企業が発展するには競争力が必要です。そのためには社員一人ひとりの能力を伸ばさなくてはなりません。個の力を伸ばすためには、やはり社内での競争環境を構築することだと思います。業務を通じて実戦形式で指導することが、わが社の人材育成だと思います。

竹本 社外研修は自社にない新しい考え方を取り入れるためには有効な手段です。ただ自社での教育システムが確立されている場合は、社内でできることを考え抜くことがより良い方向に向かうと思います。

末長 そうですね。社内で考え抜くことで、人材育成に対してより具体的なものを構築できると思います。

古市 当社も表彰制度は設けています。一番気を付けているのは、営業成績などでは表れない部分をどう評価するかですね。今、取り組んでいるのは、ベスト笑顔賞などの部門を設け、数字では計れない部分で頑張った社員を表彰しています。ただこれが社員のやる気に直結しているとは思っていません。この表彰制度を通じて、自分の接客態度などを振り返るなど、仕事のやり方について考えてもらう機会を与えるのが狙いです。

竹本 最後に今後の課題やこれからの事業展開はありますか。

末長 これからもアフターサービスに力を入れることがこれから重要になると思います。それが顧客満足度を高めることに直結していますからね。また、グループ会社の住宅部門、トヨタホーム岡山やレンタカーのトヨタレンタリース新岡山、アフターパーツ販売業のジェームス岡山との連携強化によるカーライフ提案拡充にも取り組みたいと思います。さらに、倉庫業の岡山土地倉庫や物流業のトヨタL&F岡山、岡山通運との連携によるグループならではのスケールメリットを生かし、岡山県の活性化に役立ちたいですね。

古市 自社のジュエリーブランド専門店「ベルブランシュ」をイオンモール岡山にオープンしたのを契機に、他県への出店を進めたいですね。今後は自社ブランドの育成を強化したいと考えています。また地元である岡山市、表町商店街を活性化するために尽力したいを思います。

竹本 改めて老舗企業2社の話を聞いて、まず感じたことは「進化を止めない」ということです。もちろん過去の「既存事業×既存顧客」の上に現事業は成り立っていますが、事業としての新たな価値を常に考え、実行し続けている。そういった創造へのどん欲さは、商人ともいえる圧倒的な顧客視点が根源にあると感じました。圧倒的な顧客視点は、言い換えれば事業に対して「圧倒的な当事者意識」で取り組んでいるということです。外部環境変化に対し、常に「自社」を主語にして現状にどう取り組むべきかを追求し続けることが、創造的イノベーションにつながり、地域におけるオンリーワンとなるのではないでしょうか。さらに、従業員を含めた他者を巻き込んで実行しているからこそ、会社組織全体で進化しているのだと思います。次世代の2人が今後、創造的イノベーションを岡山という地域でどう興していくのか。考えただけで非常に楽しみです。

株式会社瀬戸内海経済レポート「週刊VISION」 2015/1/19発行号 特集企画より抜粋した記事を編集しております。