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【マネジメント③】マネージャーが最も注目すべき「インナーワークライフ」とは?
2022.04.21
竹本図書館
本当にマネージャーが最も注目すべきポイントとは?
前回の記事では、「社員を適材適所に配置すること」がマネージャーの最も大切な仕事ではないということを紹介しました。では、適材適所に人材を配置する以上にマネージャーが注目すべきポイントとは何でしょうか?
本著では、この答えとして「インナーワークライフ」という概念を紹介しています。
「インナーワークライフ」って何?
聞きなじみがない言葉なので、横文字アレルギーの方には敬遠したくなる方がいるかもしれません。しかし、あまり難しい概念ではございませんのでご安心ください。

「インナーワークライフ」とは、仕事・業務を通じて社員の一人ひとりの心に生まれてくる3つの要素、感情・認識・モチベーションをまとめた言葉です。なぜこの3つを一つにまとめているかというと、
・自分の仕事に価値(認識)を感じると、やる気(感情・モチベーション)を感じる。
・機嫌(感情)が悪い日は、何事もマイナスに考えたり(認識)、何もしたくなくなる(モチベーション)。
といったように、これら3つの要素が相互作用するためです。
なぜ最も注目すべきなのかというと、長年の研究の結果によって社員たちの「インナーワークライフ」を良い状態に保つことができている企業ほど長期的に存続・繁栄していることが分かっています。逆に悪い状態にしてしまっていた企業は、たとえ業界の覇権を握っていた大企業でさえ潰れてしまったという事実が明らかとなったからです。
「インナーワークライフ」の3要素
この「インナーワークライフ」は、先ほど取り上げた「感情」「認識」「モチベーション」の、大きく3つの要素から構成されています。
〇感情

感情をご存じない方はいないと思います。
感情といっても多種多様であるため、ここではざっくり2つのポイントにまとめて注目してください。
①快か不快か(プラスかマイナスか)
②感情の強度(強さ)はどれくらいか
例)・仕事について上司から軽く励ましてもらった(プラス・中)
・昼休憩中に、同僚が差し入れをくれた(プラス・小)
・作っていた資料のデータが消えた(マイナス・大)
・上司がいつも否定的なフィードバックをする(マイナス・大・持続的)
〇認識
続いては認識です。これは、ある出来事という事実に対して個人がどのように捉えるかです。こちらも大きく2つのポイントに分かれます。
①状況をどのように認知しているか
②出来事をどのように解釈したか

例)・仕事について上司から軽く励ましてもらった(プラス・小)
→「この上司は部下思いの良い人だ」「この仕事には意義があるのだろう」
「今日は上司の機嫌がいいのかもしれない」「自分は上司に気に入られている」など
・昼休憩中に、同僚が差し入れのお菓子をくれた(プラス・小)
→「あの同僚は優しい」「どこにいったのだろう、聞いてみよう」
「同僚は気前がいい」「仲間思いなやつだ」「おいしそうだな」など
・作っていた資料のデータが消えた(マイナス・大)
→「最悪だ、作り直しか」「仕事が進まなくなったぞ」「今日はついていない」
「なぜ旧型のPCを使うのか、会社が買い替えていなかった責任だ」など
〇モチベーション
最後はモチベーションです。モチベーションというと「やる気」という言葉でひとくくりにされがちですが、実際にはモチベーションの源泉は3種類あります

①外発的な動機付け:外部から与えられるモチベーション
例)昇進・お金・賞賛・締め切り・ご褒美など
②内発的な動機付け:個人の内側から湧き上がるモチベーション
例)仕事への深い没頭・楽しみ・やりがい・熱中
③関係的・利他的な動機付け:他人との関わりの中で生まれるモチベーション
例)メンバーとの仲間意識・グループや社会への貢献

一人ひとりの中には、この3種類のモチベーションが共存しながら存在しています。
ここで部下のやる気を安易に高めようとして外発的な動機付けに頼る上司は多いのですが、数多くの研究からインセンティブなどの外発的な動機が高まるほど、ほかの2つの動機が損なわれて長期的なモチベーションを減らしてしまうという事実が分かっているのです。そのためマネージャーは、特に2つ目の「内発的な動機付け」をいかに部下の中で高められるかが、重要な役割となってきます。
なぜ「インナーワークライフ」に注視すべきなのか?
この3つを確認して、まだ「最も大切」というほどの重要性を感じない方も多いかもしれません。ここで、「インナーワークライフ」を向上させることが、社員のどのような能力を高めるのか、ということについて、具体的な4つの仕事力から解説します。

インナーワークライフを高めることは、これら4つの仕事力をすべて同時に、包括的に高めていることがデータによって明らかにされたのです

ここで絶対に忘れてはならないのは、会社の戦略がたとえどれだけ優れていても、それを実行するのはあくまで組織内の社員たちであることです。
そして社員たちの発揮できる能力は元々の素質で固定されているのでなく、インナーワークライフの日々の状態で大きく変動するということです。
マネージャーには何ができるのか?

インナーライフワークは仕事そのものから直接的に得るものであり、たとえありふれた些細な出来事であっても大きな影響を及ぼしうる可能性があります。
本著ではマネージャーが社員のインナーワークライフを高めるために最もすべきことを「チーム・部下にとってやりがいのある仕事が、毎日少しでも進歩するように支援すること」であると結論をだしています。
しかし、これだけではわかりづらいため、次回からは「インナーワークライフを高める3大要素」をランキング順で解説していきます。
【主要参考文献】
『The Progress Principle(和訳:マネジャーの最も大切な仕事―95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力)』,
テレサ・アマビール&スティーブン・クレイマー著,中竹竜二 (監修), 樋口武志 (翻訳),英治出版,2017年