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【マネジメント⑥】マネージャーが最も重要視すべき「進捗」とは?【第1位】

2022.05.11

竹本図書館

マネージャーが最も大切にすべき第1位は?

前回まででマネージャーが本当に注力すべき、インナーワークライフの向上策を紹介してきました。第3位が社員の心が奮い立つ対人関係の要素「栄養ファクター」、第2位が仕事を直接支援する出来事「触媒ファクター」と、納得できる要素でした。

逆に果たしてこれ以上に影響力の高い要素はあるのでしょうか?

第1位:進捗

インナーワークライフを高める要素の第1位、それは「進捗(しんちょく)」です。

莫大な調査の結果、社員一人一人はこの進捗が実感できたときに何よりもインナーワークライフが高まっていたという結果が得られました。

〇どういったものなのか?

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 これは一言で簡単に表すと「自分がかかわっている仕事が前に進んだ」という感覚のことです。例を挙げるなら

 ・営業で契約が取れたというような小さな勝利

 ・担当したプログラムのコードが目標まで書きあがる

 ・作業の手順にひと工夫を加えて効率が上がったと実感

 ・四半期の売上目標に到達する

といった、前進やブレイクスルー、目標の達成などのことです。

ここで重要なことは、何か進捗によってボーナスが貰えるからといった報酬による喜びなのではなく、進んだこと自体に人々は喜びを得ているという点です。

〇なぜ重要なのか?

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 なぜ進捗の感覚が多大な影響をあたえるのか?

それは、仕事という存在が個人のアイデンティティに密接であるからです。皆さんも自己紹介をするときには恐らくまず仕事について述べるのではないでしょうか?

人間は仕事や肩書を自分の一部として考えていて、仕事を通じて自己効力感を得ているのです。

〇調査したマネージャーの95%が軽視していた事実

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 ところがこの進捗について、669人の優れたマネージャーを対象に行った「何を重要視すべきか」という質問調査で、なんと結果はダントツの最下位わずかたった5%しか注目していなかったのです。ちなみに1番人気は「良い仕事に対して評価すること」でした。

これについては2009年のマッキンゼーでも似たような研究があるようですが、一切進捗については言及されておらず、盲点であることが示されています。

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この原因はおそらく、重要である社員のインナーワークライフはマネージャーから直接見ることが難しいからでしょう。

突然、家に帰ると家族が不機嫌だった時でさえその気持ちが読めないのに、まして社会人であることが求められる職場で心の内側を正確に読むことなど不可能です。

だから今回のこのような研究に価値があるのだといえます。

〇リーダー・マネージャーは何をすべきなのか?

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 今回で3つ前の記事のラストで述べた「やりがいのある仕事が進捗すること」の意味が見えてきます。

 

仕事と社員のアイデンティティは密接につながり、その仕事がやりがいのある・重要なものであると社員が感じることは、そのまま自分自身に価値がある・期待されていると認識することにつながります。そして仕事が前進することは、そのまま自分自身が成長したという効力感を与えます。

ここでマネージャーに求められるのは、社員がより進捗を感じられるように思考を巡らせることです。これについてリチャード・ハックマンとグレゴリー・オルタムの研究が示す進捗に気づく2つの方法を紹介します。

〇社員が進捗に気づけるようになる2つの方法

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1.マネージャーからのフィードバック

 一つ目はフィードバックを受けることです。これは評価をしたり、褒めたり、どこまで進んでいるかの全体像を伝えたりすることが挙げられます。

もちろんこれは大切ですが、マネージャーが常にフィードバックを部下たちに毎日与えるのはなかなか骨が折れます。ここでこの研究では、もっと重要な方法があると示しています。

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2.仕事自体からのフィードバック

 どういうことかというと、社員が個人で勝手に達成感が得られるようにすることです。何か達成したときに、その場でガッツポーズをとってしまう感覚のことですね。

マネージャーの重要な仕事は、社員が仕事中に一人一人がその場で進捗・達成感を感じられるようにすることなのです。

仕事の流れの中で→自分がした作業の結果がわかるように→各工程をデザインする

ということを意識してください。これだけではまだイメージが難しいかもしれませんので、非常に仕組みのつくられかたが上手い例を2つ紹介します。

①オリンピック金メダリストの担当コーチ

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 アスリートやアーティスト、または有能な経営者ほど、優秀な専門家・アドバイザーの意見を柔軟に聞き入れ取り入れるという特徴が言われています。

そこで金メダルを獲得できた選手を担当したコーチを調べたところ、共通の指導特徴が分かったのです。それは「試合の勝利に重きを置かず、選手の日々の成長や小さな成功を重視する」ということです。この方針の下で練習を重ねた結果、金メダルにたどり着いていることを考えれば、進捗の重要性は言うまでもありません。

②テレビゲーム

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 2つ目はなんとテレビゲームです。なぜ子どもたち(時に大人たち)はあんなにもゲームにのめりこむのか?近年、実は研究対象として注目されるほどゲームデザインというものは優れた性質を備えています。特に「確実に着実に進捗できて、すぐ目に見えてフィードバックが得られる」という仕組みは目を見張るものがあります。例を挙げれば

・今のレベルと次のレベルまで必要な経験値 ・今のレベルで進めるステップ

・次の小さな目標(クエスト)と達成度 ・これまでの達成の記録

進捗のみに焦点を当てても、簡単にフィードバックが得られるように様々な仕組みが設計されています。

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 マネージャーはこれらのように、仕事の中でいかに達成感を感じられるのかについて、創造性を用いてデザインすることが求められています。

また、マネージャーでなくても社員個人が自ら頭を使って働き方を工夫し、進捗を得られるように自分の仕事をデザインできるようになれば、その社員は必ず大きく成長するでしょう。

今回までの記事で、インナーワークライフを高めるためには何が必要なのかを紹介しました。次回は、インナーワークライフがポジティブな状態に保たれていると、どのような好影響が表れるのか、具体的な事例や研究結果を参考に解説します。

【主要参考文献】

『The Progress Principle(和訳:マネジャーの最も大切な仕事―95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力)』,

テレサ・アマビール&スティーブン・クレイマー著,中竹竜二 (監修), 樋口武志 (翻訳),英治出版,2017年