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【竹本塾No.23】会社・組織のビジョンは、職場の従業員にどうして浸透しないのか

2019.08.21

コラム

ビジョンが伝わらない、浸透しない、行動につながらない 3つの理由

「ビジョンが組織に浸透しない。」といった話をときどき耳にします。

はたして、ビジョンが浸透しない原因は、組織の中のどこかにそれをせき止めたり、勝手にゆがめて伝えたりする人がいるからでしょうか?

そうではなく、「ビジョンが浸透しない」といわれているケースのほとんどは、

 

①伝え方に問題がある

ビジョンそのものに問題がある

③社内コミュニケーションに問題がある

 

この3つのどれかです。

ビジョンを目指す「意図」が伝わるから "気づき" が得られる

企業のビジョンとは、その企業が将来、どのような姿になりたいのかを表したものです。

その表現方法に決まり事はないため、通常は言葉で示されます。しかし、ビジョンが言葉で表されたとき、ほとんどの場合、どこかで聞いたようなありきたりな表現になってしまいます。斬新な言葉を使えばよいというわけではないので、それは仕方のないことですが、社員にすればどこに目新しさがあるのか、他社のビジョンとどこが違うのかがよく分かりません。

 

例えば、「豊かな社会づくりに貢献できる会社を目指す」とか、「業界でオンリーワンの企業になる」とかいった言葉の意味は、日本語を知っていれば分かりますが、それだけでビジョンの本当の意味は理解できません。言葉で示される「情報」だけではなく、なぜそのビジョンを目指すのかという「意図」が分からなければ、ビジョンの意味が理解できないからです。

 

さすがにビジョンを表した言葉だけを提示して、社員に意味を理解させようとする会社はほとんどないに違いありません。同時に、なぜそのビジョンなのかという理由が説明されるはずです。けれども、その説明の仕方が誤解されているケースが少なくないように思います。

 

例えば、「企業の社会的責任が重視される時代になった。社会に貢献できない会社は生き残れない。だから、社会に貢献する会社を目指す」とか、「市場が成熟し、競争が激しくなっているため、圧倒的な差別化要因が必要だ。だから、オンリーワン企業になりたい」とかいった説明がなされるかもしれません。経営環境がこう変わるから、このビジョンを目指すという説明です。

 

そのような説明が無益というわけではありませんが、社員がそれを聞いてもあまり新鮮さを感じないでしょう。そのような環境変化については、多かれ少なかれ分かっているからです。そのため、そこに「気づき」はありません。ビジョンを言葉にした情報を論理的に説明した情報も、やはり常識的なものになってしまうのです。その結果、ビジョンは社員の心に残ることなく忘れ去られていきます。

従業員がビジョンを本当に理解するためには、「自分で気づく」がポイント

ぜそのビジョンを目指すのかという「意図」は、社員に推論させることが必要です。

その推論とは、「経営トップがそのような価値観を大切にしているのであれば、そのビジョンを目指すことに納得ができる」という気づきを得させることです。

トップがどのようなレンズを通して会社の未来を見ているかに、社員自身が気づくことによって、はじめてビジョンに対する深い理解が可能になります。

 

ビジョンを理解するということは、トップの価値観のレンズを通した世界観を理解することです。それは、「なるほど、そういうことか」といった感覚です。

その気づきが、創造性(アイデア)を引き出すのです。「このビジョンを理解せよ」と押し付けても、その理解が得られることはけっしてありません。

行動に移つすことができる、1対1(ワン・オン・ワン)コミュニケーションの手法とは

ビジョンが組織に浸透するには、そのための「場」が必要です。

その場とは、トップがビジョンに込められた意図を語り、社員がその意図を読み取るための場です。そうした双方向のコミュニケーションの場がなければ、そもそもビジョンの裏側にある価値観は伝わらないのです。

 

例えば、「豊かな社会づくりに貢献できる会社」をビジョンとする社長と、社員が話す機会があったとします。そこで次のような対話が行われれば、ビジョンの意図はより鮮明に伝わるでしょう。

 

社員:「豊かな社会づくりに貢献できる会社を社長が目指しているのは、そのような立派な会社にしたいということですか?」

社長:「立派な会社にしたいのはもちろんだが、慈善事業をしたいわけではない。社会に貢献することによって、大きな仕事ができると思うからだ」

社員:「広く社会の役に立てる会社にしようということですか?」

社長:「そのとおりだ。社会に貢献することによってわが社に対する信頼が生まれる。その信頼関係が何より重要だ。世の中の至るところで、わが社に対する信頼関係が創り出されるような会社にしたい」

 

「信頼関係」を何よりも大切にするというトップの価値観を理解することによって、「豊かな社会づくりに貢献できる会社」を目指すことに納得がいき理解が得られます。それによって、トップの価値観のレンズが社員にも共有されるようになるのです。